みんなが陥る盲点!頑張りすぎで脊柱管狭窄症が悪化する!?おなかの深部筋の硬直・萎縮に要注意|カラダネ

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みんなが陥る盲点!頑張りすぎで脊柱管狭窄症が悪化する!?おなかの深部筋の硬直・萎縮に要注意

著者:清水整形外科クリニック院長 清水伸一

腰椎前弯を保つ役割を担う腸腰筋

私は多くの腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)の患者さんの体に直接触れて診察を行っていくうちに、ある共通点を見つけました。それは、ほとんどの患者さんで、おなかの下半分の奥にある深部筋「腸腰筋(深腹筋ともいう)」が硬直・萎縮(専門的には拘縮という)しているということです。
腸腰筋とは、腰椎(背骨の腰の部分)と左右の大腿骨、あるいは骨盤を構成する腸骨と左右の大腿骨をつないでいる筋肉群の総称で、大腰筋・小腰筋・腸骨筋の三つの筋肉からなっています(上の図を参照)。
腸腰筋は、腰椎に備わるゆるやかなカーブ(前弯)を維持して正しい姿勢を保ったり、股関節を屈曲させて太ももを持ち上げたりする役割を担っています。また、腸腰筋には、腰を後屈させると伸び、腰を前屈させると縮む特徴があります。
脊柱管狭窄症の患者さんは、とかく腰ばかりに注意が向きがちですが、実はおなかの深部にあるこの腸腰筋の拘縮が、脊柱管狭窄症の悪化に大きく関係しているのです。

腸腰筋の拘縮はやがて全身に影響を与える

拘縮した筋肉が坐骨神経を圧迫する

01_11_02.jpg腸腰筋の拘縮は、脊柱管狭窄症の患者さんが取りがちな前傾姿勢で起こりやすくなります。前傾姿勢になると、腸腰筋は常に縮んだ状態になってほとんど使われなくなり、結果として硬直・萎縮してしまいます(上図①)。
また、足腰が痛むと、どうしても足腰に余計な力が入りがちになります。これも、腸腰筋の拘縮を招く大きな原因です。
腸腰筋が硬く縮んだままになると、拘縮した筋肉がその周囲を通る坐骨神経を圧迫し、足腰の痛みやしびれを引き起こしやすくなります(上図①-1)。

腰椎や骨盤に影響して下半身に症状が出る

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また、腸腰筋のつながる腰椎や骨盤が無理やり引っぱられて、腰椎前弯が失われたり骨盤が後方に傾いたりもします(上図②)。そうすると、腰椎周辺から延びる坐骨神経が引っぱられて、やはり痛みやしびれを起こします(上図②-1)。この場合、特に足裏のしびれや肛門周囲の違和感などが起こりやすくなります。

最終的には全身のバランスが乱れて腰に負担がかかる

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さらに、腰椎や骨盤の変形は、全身の骨格バランスの乱れを招きます。骨格が乱れて体の重心がずれれば、腰椎にかかる負荷や衝撃も増えます。その結果、椎骨の変形や椎間板の変性、靱帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)の肥厚を招き、脊柱管の狭窄を進め、症状を悪化させることにつながります(上図③)。
脊柱管狭窄症の症状は前傾姿勢を取るとらくになるので、この病気とつきあううえでうまく活用してほしいのですが、あまりに頻繁に長時間取りつづけると、腸腰筋の拘縮を進め、症状の悪化を引き起こす原因になるので注意が必要です。

腸腰筋の拘縮の有無は太ももがポイント

ちなみに、腸腰筋は体の深いところにある深部筋であるため、腸腰筋が拘縮しているかどうかを自分の手で触れて確かめるのはなかなか難しいものです。ただ、腸腰筋が拘縮しているかどうかは、次のようなチェック法で簡単に調べられます。
立った状態で、その場で足ふみをするように左右片足ずつ、ゆっくり太ももを上げてみてください。太ももがスムーズに上がらなかったり、痛みが現れたりする場合は、腸腰筋が拘縮している疑いが濃厚です。

腸腰筋ほぐしの特効体操「おなか脱力腰回し」

この腸腰筋の拘縮をほぐすにはどのような方法が適切でしょうか。筋肉の柔軟性を回復させる方法としてまっ先に思い浮かべるのは、指圧やマッサージではないでしょうか。
ところが、腸腰筋は体の奥深くにある深部筋なので、指圧やマッサージなど体の外部から物理的に加える刺激がほとんど届かないのです。
そこでオススメしたいのは、「腹ペコ脱力」「足ブラ脱力」「腰ブラ脱力」の三つからなる「おなか脱力腰回し」です。おなか脱力回しは、下腹にゆっくりジワリと力を込めたあと、その力を一気に抜くという体操で、いずれも1分行うだけの簡単な体操です。
筋肉の緊張と弛緩をくり返し行うことで腸腰筋の拘縮をほぐし、本来備わる柔軟性を取り戻そうというわけです。これなら、指圧やストレッチでは刺激しにくい深層筋でも自分でらくにほぐせます。

痛みやしびれ以外にも効果的なおなか脱力腰回し

しかも、このおなか脱力腰回しで脊柱管狭窄症による足腰の痛みがよくなる人は多いのですが、効果はそれだけにとどまりません。
脊柱管狭窄症の症状として訴える人が多いにもかかわらず、改善が難しいとされる足のしびれや足の異常感覚、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)がよくなるケースも多く見られます。中には、排尿・排便障害の初期症状である夜間頻尿や、尿もれ・便もれまで顕著に改善するケースもあります。
私は、脊柱管狭窄症に対するおなか脱力腰回しの効果について、薬物療法や運動療法で満足な効果が得られなかった難治型の脊柱管狭窄症の患者さん43人を対象に調査を行いました。具体的には、おなか脱力腰回しを3ヵ月続けてもらい、その効果を自身の体感評価として答えてもらったのです。
その結果、症状の改善度合いについて「満足している」「やや満足している」と答えた人の合計が、全体の67%に当たる29人に上ったのです。
難治型の患者さんの約七割が改善を実感しているのは、この体操の効果のすごさを物語っているといえます。おなか脱力腰回しは、脊柱管狭窄症に悩む患者さん全員が行うべき基本体操として、ぜひ実践してほしいと思います。
これら、3つのお腹脱力腰回しの方法は、

●「おなか脱力腰回し」の3つの運動について、詳しくは、
【おなか脱力腰回し①】痛み・しびれが退散する「腹ペコ脱力」
【おなか脱力腰回し②】 坐骨神経痛にも効果大「足ブラ脱力」
【おなか脱力腰回し③】仙腸関節を効果的にほぐす「腰ブラ脱力」
をご覧ください。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

狭窄症Part02_cover.png出典:わかさ夢ムック13 脊柱管狭窄症に絶対勝つ!新研究で続々わかった!あっと驚く自力克服道場パート2
http://wks.jp/mook013/
著者:清水伸一

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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