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脊柱管狭窄症が難治な理由は一時的な対症療法にあり

著者:お茶の水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長 銅冶 英雄

腰部脊柱菅狭窄症は一般的に難治と言われています。ここではその理由を解説します。

現行の保存療法の効果は一時的で効果薄

医学が日進月歩で進歩しているにもかかわらず、腰部脊柱管狭窄症に悩む人が、今なお急増しています。
脊柱管狭窄症に対する病医院の治療では、まずは、痛みやしびれなどの症状を和らげ、日常動作の改善を目的とした保存療法(手術以外の治療法)を行うのが一般的となっています。
現在、広く行われている保存療法では、薬物を用いて足腰の痛みやしびれを和らげ、強い痛みには神経ブロック注射(神経の周囲に麻酔薬を注射する治療)を行うケースが多く見られるようです。また、牽引治療や通電治療、温熱治療、ときには針治療やマッサージが行われています。

対症療法ばかりに終始して「狭窄症難民」が生まれる

07_04_05.jpgこうした治療で脊柱管狭窄症がよくなればいいのですが、たいていの場合、効果は一時的で、根治にいたることはあまりありません。その結果、患者さんは整形外科に長期間通ったり、評判のいい治療院を渡り歩いたりして「狭窄症難民」になってしまいます。
なぜ、このようなことが起こるのかといえば、現行の保存療法はいずれも、対症療法(症状を抑える治療法)にすぎないからです。
私は、狭窄症難民が増えつづけているのは、脊柱管狭窄症の治療が対症療法に終始し、脊柱管狭窄症を根治に導く有効な手立てを現代医学が見出せていないことが最大の原因だと考えています。

薬は根本的な治療にはならない

07_04_02.jpg脊柱管狭窄症の薬物療法で主に用いられる薬としては、①鎮痛薬(非ステロイド性炎症鎮痛薬・NSAIDs)、②筋弛緩薬、③ビタミンB12製剤などがあげられます。また、④血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤)もよく使われます。
しかし、これらの薬は痛みを抑えたり、筋肉の緊張を緩和したり、神経を強めたりする効果はあるものの、あくまで一時しのぎの対症療法であり、脊柱管狭窄症の根本的な解決にはなりません。
血管拡張薬についても圧迫された神経周辺の血流を改善してしびれを和らげているにすぎないため、症状を軽減する短期的な効果は認められているものの、長期的な効果についてはわかっていません。神経の圧迫を和らげて根本的に改善に導くものではないと考えられます。

ブロック注射でも長期的な効果は不透明

さらに、圧迫されている神経やその周囲に局所麻酔薬や抗炎症薬を注射して痛みの伝達を止める神経ブロック注射も、短期的な効果は認められても、長期的に有効であるという医学的な根拠は明らかではありません。
理学療法としてよく行われる牽引治療や通電治療、温熱治療なども同様です。こうしたことは、日本整形外科学会の『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』にも記されているのです。
牽引・通電・温熱治療についても、一般的な整形外科で行われる保存療法ではありますが、これらも長期的な効果は認められません。
このように、ほとんどの保存療法は効果が一時的で、せいぜい症状が少しの間だけらくになる程度で、治療時間や治療費の割に、その効果は乏しいといわざるをえません。
それにもかかわらず、こうした治療を受けるために整形外科に行列を作る光景がよく見られます。しかし、私は、効果の薄い保存療法を漫然と続けて、大切な時間を費やすべきではないと考えています。

運動療法なら長期的な改善効果が見込める

私は、大学院で腰痛と薬についての分子生物学的基礎研究を行いましたが、そのころから腰痛に対する薬物療法の効果に限界を感じていました。 では、どのような治療なら、一時しのぎでなく長期的な治療効果が期待できるのか。 脊柱管狭窄症は神経が圧迫されて生じる病気なので、根治に導くには、神経の圧迫を改善する必要があります。手術なら狭くなった脊柱管を物理的に広げられますが、従来の保存療法では神経の圧迫を取り除く効果は期待できません。 そこで、私が注目したのが「運動療法」でした。
運動療法とは、体を動かすことで病気の軽減や回復をめざす治療法です。運動療法で腰椎(背骨の腰の部分)の組織を物理的に動かすことができれば、徐々にではあっても、狭くなった脊柱管を広げられるのではないかと考えたのです。
こうして私は大学院を卒業後、手術を行う整形外科の専門医にとどまらず、運動療法によるリハビリテーションの専門医になり、試行錯誤をくり返して腰痛や関節痛を根治に導く方法を模索しました。その結果、運動療法を継続することにより、効果が長期的に持続して脊柱管狭窄症を根治へと導く可能性を見出すことができたのです。

運動療法で多くの脊柱管狭窄症患者が改善

現在、さまざまな症状を持った人々が私のクリニックに訪れますが、運動療法を指導し実践することで、それまでどんな治療でもよくならなかった症状が、手術なしでも改善される例が後を絶ちません。 ぜひ、脊柱管狭窄症の症状に悩んでいる人、またその家族の方々は、今一度今の治療方法を見直して、運動療法を取り入れてみてはいかがでしょうか。 なお、脊柱管狭窄症の症状のなかには、緊急で手術の検討が必要な場合も有りますので、運動療法を取り入れるさいには、まずは現在の主治医などに相談してから始めてください。
私が開発した「痛みナビ体操」に関して、詳しくは、下記のわかさ出版が発行する「腰の脊柱管狭窄症が革新的自力療法[痛みナビ体操]で治った!」と「坐骨神経痛・腰痛 最新対策セミナーDVD」を参考にしてください。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。


狭窄症_痛みナビ_cover.png出典:わかさ夢ムック5 腰の脊柱管狭窄症が革新的自力療法[痛みナビ体操]で治った!
http://wks.jp/mook005/
douyaDVD_M.jpg参考資料:わかさ夢DVDライブラリー② 坐骨神経痛・腰痛 最新対策セミナーDVD
http://wks.jp/dvdmook002/
著者:銅冶英雄


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