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腰痛が原因でウツに!? 脊柱管狭窄症患者の3割がウツで悩むと判明

著者:清水整形外科クリニック院長 清水 伸一

私の医院を訪れる脊柱管狭窄症に悩む患者さんを診ていると、罹病期間が長い人ほど、気分の落ち込みや不安感、無気力などのウツ症状を招きやすいことに気づかされます。

「狭窄症の人の32%がウツ傾向」東大医学部の調査で

実際に、当院の脊柱管狭窄症の患者さん84人に聞いたところ、なんと83人が、「どんどん悪化して、もうよくならないのではないか」「周囲に迷惑をかけないか心配」「なぜ私だけ」「誰もわかってくれない」などといった不安を抱えて生活していることがわかりました。
こうした脊柱管狭窄症とウツ症状との関係については、東京大学医学部でも調査が行われています。
その調査では、脊柱管狭窄症と診断された男女253人を対象に、ウツ状態の程度を調べました(高齢者の抑ウツを評価する検査表「GD—15」を用いた)。すると、32%の人がウツ傾向であることがわかったのです。

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同時にこの調査では、足腰の痛みやしびれの程度、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)の度合い(連続歩行距離)なども測り、ウツ症状との関連も調べていますが、痛みやしびれが強く連続歩行時間が短い人ほど、ウツ状態に陥りやすいと報告されています。

歩けなくなる不安に悩む日々

どうしてこのようなことが、起こるのでしょうか。
みなさんもよくご存じのように脊柱管狭窄症では、足腰の強い痛みやしびれに襲われます。また、少し歩いただけで痛みやしびれが強まって、満足に歩けなくなる間欠性跛行も多発します。
脊柱管狭窄症になると、こうした苦痛に絶えずさらされることになります。
その苦痛は、患者さんがよく口にするように「この病気になった人にしかわからない」ほどつらいものです。
しかも、脊柱管狭窄症になると、長年にわたって強い痛みやしびれに悩まされることも少なくありません。こんな状態に陥れば、どんなに我慢強い人でも、心が折れて暗く落ち込んだ気持ちになるものです。精神的に不安定になり、イライラしやすくなることもあるでしょう。

07_06_02_要カラー化.jpgまた、患者さんの多くは、「いつか歩けなくなるのではないか」という不安を常に感じています。特に、さまざまな治療を受けても症状がいっこうによくならない人では、こうした不安が強く現れます。
加えて、当然のことですが、痛みやしびれは他人に共感してもらうことが難しいものです。そのため、「自分の苦しみを誰もわかってくれない」という思考に陥りやすくなります。そして、不安を友人や家族にさえも打ち明けられなくなり、一人で悩んで自分の殻にとじこもってしまいやすいのです。

うつ症状が狭窄症を悪化させる

こうしたウツ症状は、それ自体が大きな問題ですが、さらにやっかいな問題もはらんでいます。
というのも、ウツ症状が脊柱管狭窄症をさらに悪化させるケースがよく見られるからです。
ウツ状態に陥ると自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)のバランスが乱れやすくなります。自律神経のうち心身の働きを緊張させる交感神経が優位になると、知覚神経が過敏になり痛みやしびれを強く感じやすくなるのです。
また、気分が落ち込んで自宅に引きこもりがちになると、足腰の筋力低下が起こり、歩く力がますます衰えてしまいます。
さらに、ウツ症状の一つに不眠がありますが、眠れない日が続けば体調も悪化してきます。

脊柱管狭窄症は治せる! 前向きなほど回復は早い

一番よくないのは、「どうせ自分は治らないんだ」などと自暴自棄になって、みずから治療をやめてしまう恐れのあることです。
以上のことから、ウツ症状を伴う脊柱管狭窄症の患者さんには、脊柱管狭窄症の治療と同時に、心のケアが重要だといえるでしょう。
私自身の診療経験でも、患者さんの心のケアの成否によって、脊柱管狭窄症の病状が大きく左右されることが数多くありました。気持ちを前向きに切り替え、自分なりに工夫して人生を楽しむ人ほど、痛みやしびれの回復も早まるのです。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

狭窄症Part01_cover.png出典:わかさ夢ムック1 腰と首の脊柱管狭窄症に絶対勝つ!あっと驚く自力克服道場
http://wks.jp/mook001/
著者:清水伸一

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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