「神経根型」脊柱管狭窄症の症状~左右片側に痛みやしびれ、歩行障害も~|カラダネ

【学ぶ】基礎知識

「神経根型」脊柱管狭窄症の症状~左右片側に痛みやしびれ、歩行障害も~

著者:清水整形外科クリニック院長 清水 伸一

腰部脊柱管狭窄症は、痛みの原因となる部位別に3つのタイプに分けられます(詳しくは、脊柱管狭窄症の3タイプ分類で未来の症状と治し方が見えるへ)。腰部脊柱管狭窄症の大半を占めるのが、3タイプあるうちの「神経根型」です(清水整形外科クリニックでは67.8%を神経根型が占める)。

背骨の神経根が圧迫され、左右片側に痛みやしびれ

神経根とは脊髄の末端にある馬尾から左右に枝分かれした神経の根もとのことで、主に足の感覚や運動をつかさどっています。
この神経根が脊柱管の狭窄によって圧迫された病型(タイプ)を、神経根型といいます。

神経根は背骨の左側と右側に一つずつありますが、その両方が一度に圧迫されることは稀です。通常、左右どちらかの神経根が障害を受け、症状も左足か右足のどちらか一方だけに現れます。
これを専門的には「片側性」といいます。

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ヘルニア、すべり症経験者に多発し、歩行障害も

神経根型で特徴的な症状は、長時間立ちつづけたり歩いたりしたときに、神経根が圧迫された側の腰からお尻、太もも、ふくらはぎ、すね、足裏にかけて坐骨神経痛(強い痛みとしびれ)が現れることです。

さらに、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)が起こって、歩ける距離が短くなってきます。
神経根型は、どちらかといえば、変形性腰椎症や腰椎分離すべり症、腰椎変性すべり症、腰椎椎間板ヘルニアの既往がある人に起こりやすいようです。

腰の重だるさや違和感からはじまる

では、神経根型を発症した患者さんは、一般に、どのような経過をたどるのでしょうか。

まず、脊柱管狭窄症の3タイプすべてにいえることですが、症状はジワジワと現れ、長い年月をかけてゆっくりと進行していきます。

ある日突然、耐えがたい痛みに襲われ七転八倒することはあまりありません。 神経根型の初期症状としてよく聞かれるのは、腰の重だるさや違和感です。その後、腰痛や足の痛み・しびれがときどき感じられるようになってきます。
症状の現れ方には周期的な波があり、はっきりとした自覚症状が現れても、ほうっておけば時間の経過とともに自然に治まることがよくあります。

徐々に症状が悪化し3~4年で治療が必要に

ただし、症状の増悪と寛解(鎮静化)をくり返していると、その周期がしだいに短くなり、持続的な症状に変わってきます。
神経根型では、足腰の痛みやしびれが強くなり、立ったり歩いたりするたびに間欠性跛行が現れて、歩行距離がしだいに短くなってくるのです。

症状がここまで進むと、異変を感じて整形外科を受診する人が増えてきます。当院の追跡調査によれば、神経根型の患者さんの平均年齢は69歳、罹病期間は3年3ヵ月です。

つまり、60代半ばに自覚症状が現れ、3〜4年のうちに整形外科で治療が必要なほど悪化してしまうというケースが多いようです。

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手術なしの保存療法で痛み改善の可能性大

幸いなことに、神経根型は多くの場合、整形外科で保存療法(手術以外の治療法)を受ければ、症状の改善が大いに見込めます。

私は、神経根型の患者さんに対し、VAS(症状の強さの尺度。0〜10点で評価し点数が低いほど症状が良好)を利用して、当院での治療による症状の改善度を調べました。

その結果、初診時と比べて症状の強さは半分以下に抑えられたことがわかったのです(平均8.3点→3.9点)。 それとともに、治療による間欠性跛行の改善度についても調べました。

すると、一度に歩ける距離が初診時は平均416mだったのが、保存療法によって512mに延長されたこともわかりました。
ただし、保存療法で顕著な改善効果が期待できるのは主に足腰の痛みと間欠性跛行で、足のしびれはそのまま残ってしまう場合が多いようです。

神経根型の脊柱管狭窄症で手術を選択するケースは少ない

神経根型の患者さんには、完治をめざして手術に踏み切る人もいます。
当院の神経根型の患者さんで手術を受けた人の割合は、12.5%でした。
神経根型で手術を受ける患者さんのほとんどは、仕事などの都合で早く治ることを希望している人です。

また、一部に痛みに耐えられなかったり、マヒが生じたり、足に萎縮が生じたりして手術にいたった例もあります。手術を受ければ足腰の痛みと間欠性跛行は劇的に改善されますが、しびれは残る場合が少なくありません。

脊柱管狭窄症のタイプは、医師の診断がなくても、ある程度自分で推測することができます。詳しくは、自己診断チェック付! 脊柱管狭窄症の診断・検査方法とはをご覧ください。

●脊柱管狭窄症の他の症状(馬尾型・混合型)を知るには・・・・・・
「馬尾型」脊柱管狭窄症の症状~両足にしびれ、痛み、尿もれや便秘も~
「混合型」脊柱管狭窄症の症状~お尻から足裏に痛みや違和感、排尿・排便障害も

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

狭窄症Part01_cover.png出典:わかさ夢ムック1 腰と首の脊柱管狭窄症に絶対勝つ!あっと驚く自力克服道場
http://wks.jp/mook001/
著者:清水伸一

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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