痛みの真の原因を見つけ、根治の可能性をぐんと高める革命的検査法[立位MRI]がすごい!!|カラダネ

【知る】ニュース&トピックス

痛みの真の原因を見つけ、根治の可能性をぐんと高める革命的検査法[立位MRI]がすごい!!

著者:内田毅クリニック院長 内田 毅

みなさんは、腰部脊柱管狭窄症の検査で「MRI(磁気共鳴断層撮影装置)」の検査を受けたことがあるでしょう。
普通のMRIは寝て行いますが、立ったまま行う「立位撮影機能搭載MRI」というのをご存じでしょうか?立位撮影機能搭載MRIは立ったまま撮影を行うことで、通常のMRIの「盲点」を解消できるすごい検査機器なのです。
まだ一般的ではないこのMRIを導入している、内田毅クリニック院長の内田毅先生に、そのメリットなどをお聞きしました。

従来のMRIでは狭窄の実態はつかめない

激しい腰痛に襲われて整形外科を受診すると、痛みの原因を見つけて正確な診断を導き出すために、医師から画像検査を受けることをすすめられます。X線を使ったレントゲン検査を行えば、背骨の状態などはわかります。
しかし、腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)が疑われる場合、背骨周囲の状態をより詳細に調べるために、「MRI」(磁気共鳴断層撮影装置)の検査を受けるのが望ましいといえます。MRI検査なら、骨はもちろん、レントゲンでは確認できない椎間板などの軟骨組織や靱帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)、神経の状態も克明に映し出されるからです。
通常のMRI検査では、患者さんはベッドの上であおむけに寝ます。そしてベッドが移動して筒状の空間に入っていき、磁気の力を利用して脊椎(背骨)や脊髄、臓器、血管などが断面的に撮影されます。しかし、このあおむけ寝の姿勢にこそ「盲点」がある、と私は考えています。
脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭まって神経が圧迫されることで起こりますが、実は立った姿勢のときに痛みやしびれが強くなり、あおむけ寝になると症状の和らぐケースが少なくありません。
それは、立った姿勢では背骨に重力がかかって脊柱管の中が狭くなり、あおむけ寝では重力の負担が軽くなって脊柱管がゆるむからです。
通常のMRI検査では、この立った姿勢で起こる脊柱管の狭窄の変化を調べることはできません。そこで今、にわかに注目を集めているのが、立った姿勢でMRIの検査ができる「立位撮影機能搭載MRI」(以下、立位MRI)なのです。

立位MRIなら狭窄の変化が一目瞭然

実際に、上の2つの画像を見比べてください。これは、脊柱管狭窄症の重大原因の一つである腰椎変性すべり症の患者さんの腰椎(背骨の腰の部分)を、立位MRIで撮影した画像です。
左側はあおむけ寝で撮影しており、右側は立った姿勢で撮影しています。左側のあおむけ寝の画像を見ると、すでに第4腰椎と第5腰椎の間が前後に少しずれているのがわかります。
一方、右側の立った姿勢の画像では、第4腰椎と第5腰椎の間にある椎間板がつぶれて前後に大きくずれていて、背骨の神経が強く圧迫されているようすが明らかです。
この違いは、あおむけ寝で撮るMRIの検査では、今までわかりませんでした。立位で撮影したからこそ、実際に立っているときに脊柱管の中がどれだけ狭窄されているのかが判明したのです。
立位MRIでは、通常のMRIのように筒状の空間に入るのではなく、0~89度の範囲で可動するベッドに寝てもらい、頸椎(背骨の首の部分)から骨盤までの脊椎や、手足を撮影します。あおむけ寝、立った姿勢(あるいは座った姿勢)のどちらでも撮影は可能です。こうして立位MRIで撮影すれば、立った姿勢と寝た姿勢で狭窄がどのように変化するのかがわかります。
ちなみに、あおむけ寝で脊柱管の中がゆるむのは、頸椎も同様です。そのため、立位MRIは、頸部に起こる脊柱管狭窄症の発見や診断にも活用されているのです。

脊柱管狭窄症の診断精度が確実にアップ

当クリニックでは、今から3年前に立位MRIを導入しました。これまで3000人以上の患者さんが、この機器で検査を受けています。
立位MRIの検査を受けた患者さんを病気別に見ると、腰痛(脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア・腰椎すべり症など)が約60%、首痛(頸椎症・頸椎椎間板ヘルニアなど)が約30%、ひざ痛(変形性膝関節症)などの関節痛が約10%となっています。
やはり、立った姿勢で背骨の状態に変化の現れやすい脊柱管狭窄症や頸椎症の患者さんが大多数を占めます。
立位MRIの検査の流れは、以下の通りです。
003.png004.png005.png006.png
立位MRIでは、寝た姿勢で撮る一般的なMRIと違い、筒状の狭い空間に入らないので、閉所恐怖症の患者さんも安心して受けられます。磁力を発生させるさいに起こるカンカンと大きく響く異音が少ないことも利点です。
ただし、足腰に痛みやしびれがある患者さんは、ベッドが動いて立位になったときに体が不安定になり、正しく撮影できないことがあります。その場合は、正しく撮れるまで休憩を挟みながら、何度か撮影をくり返します。
立位MRIの検査には、健康保険が適用されます。当クリニックの場合、3割の自己負担で5000円程度です。
立位MRIは、すでに全世界で3000台ほど普及しており、日本では当クリニックを含む5つの医療機関(下のリスト参照)で使われています。
整形外科の画像検査に立位MRIを導入すれば、診断の精度は確実にアップすると私は考えています。今後、さらに国内で広まっていくのではないでしょうか。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

出典

kosiraku_001.jpg●脊柱管狭窄症克服マガジン 腰らく塾vol.3 2017年夏号
http://wks.jp/koshiraku003/

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


【知る】ニュース&トピックス

この記事が気に入ったらいいね!しよう