手術の検討も必要な脊柱管狭窄症の尿漏れ・残尿感や股間の冷感に要注意!|カラダネ

【学ぶ】基礎知識

手術の検討も必要な脊柱管狭窄症の尿漏れ・残尿感や股間の冷感に要注意!

著者:清水整形外科クリニック院長 清水 伸一

脊柱管狭窄症では、足腰の痛みやしびれ、間欠性跛行などの症状がありますが、
最もやっかいな症状として、尿漏れや残尿感などの「排尿・排便障害」があります。
ここでは、手術も検討が必要になる排尿・排便障害について解説します。

排尿・排便障害を引き起こす「馬尾型」の脊柱管狭窄症については、
「馬尾型」脊柱管狭窄症の症状~両足にしびれ、痛み、尿もれや便秘も~
も併せてご覧ください。

脳の命令がうまく伝わらなくなる

腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)は、脊柱管を通る神経や血管が圧迫されることで発症します。そのため、足腰の痛みやしびればかりか、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)、足裏の違和感、脱力、マヒなど症状は多岐に渡ります。中でもやっかいなのは、排尿・排便障害です。
「尿が最後まで出ない」「1週間以上便秘が続いている」「尿意に気づきにくい」「歩くと尿がもれる」「歩くと便がもれる感じがする」。これらの症状に思い当たるなら、排尿・排便障害の疑いが濃厚です。
尿や便の排泄トラブルは、腰椎の脊柱管が狭窄され、その中を通る馬尾(脊髄の末端にある末梢神経)が強く圧迫されることで生じます。
馬尾は膀胱や直腸の働きと密接にかかわっており、「尿や便を排泄せよ」という脳の命令を膀胱や直腸に伝えます。
しかし、馬尾が強く圧迫されて命令の伝達に障害が起こると、残尿感や尿もれ、便秘などが起こりやすくなり、最悪の場合は自力で尿や便をコントロールできなくなります。

肛門のジリジリ感やムズムズ感が現れる

以上のように、脊柱管狭窄症による頻尿や尿もれ、便秘などの排尿・排便障害は、腰椎の脊柱管が狭窄し、その中を通る馬尾が強く圧迫されて、馬尾の働きが障害されることで起こります。
馬尾が障害されると、お尻から両足にかけての広範囲にしびれやマヒが生じます。また、排尿・排便障害のほか、股間にも違和感が次々と現れます。
具体的には、お尻まわりの冷感や灼熱感、肛門・股間のジリジリ感やムズムズ感などです。また、会陰部(生殖器と肛門の間)がほてったり、男性の場合では、歩行中に陰茎勃起を起こしたりすることもあります。
脊柱管狭窄症の治療では、薬物療法や運動療法などの保存療法が第一に選択されますが、こうした排尿・排便障害が現れた場合は話が別です。特に、自力で排泄できなくなった場合は、直ちに手術を検討しなくてはなりません。
脊柱管狭窄症と診断された人は、日ごろから尿や便の出に問題がないか注意し、少しでも異常が現れた場合は適切な治療を受けることが肝心です。

骨盤底筋を動かせば馬尾の働きが高まる

しかし、中には、手術を受けたのに尿もれや股間の違和感がスッキリ回復しない患者さんも少なくありません。
実は、こうした人では、馬尾の圧迫以外に尿もれや股間の違和感を引き起こす理由があると考えられます。その理由の一つが、骨盤底筋のゆるみです。
骨盤底筋とは、骨盤の底を覆っている筋肉で、腸や膀胱・子宮などの臓器を下から支えるほか、収縮・弛緩することで尿や便の排泄をコントロールしています。
骨盤底筋の大きな特徴は、ほかの30種類以上もの筋肉とつながっていることです。骨盤底筋が中心になり、多くの筋肉を連動させることで、尿や便を排泄する力を生み出すわけです。
そのため、加齢や運動不足などが原因で骨盤底筋が衰えてゆるむと、尿もれや失禁、便秘などの排尿・排便障害が起こりやすくなります。つまり、こうしたトラブルを改善するためには、骨盤底筋を鍛えることが急務なのです。

「お尻キュット」で骨盤底筋群を鍛える!

そこで、排尿・排便障害に悩む脊柱管狭窄症の患者さんにおすすめしたいのが「お尻キュット」です。お尻キュットは、骨盤底筋を動かし、強化するトレーニング法です。
実際、当院では、排尿・排便障害のある脊柱管狭窄症の患者さんにお尻キュットを指導しており、尿もれや失禁、便秘などの改善に一定の成果を上げています。そればかりか、股間のほてりやムズムズ感といった違和感まで回復する患者さんも少なくありません。
これは、骨盤底筋を動かすことで骨盤や腰周辺の血流がよくなり、その結果、馬尾に栄養や酸素が十分に行き渡って、その働きが高まるためだと考えられます。
お尻キュットについては、骨盤底筋群を鍛える[お尻キュット]で尿漏れ・ムズムズ感から脊柱管狭窄症まで撃退!をご覧ください。
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・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
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●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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