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【学ぶ】基礎知識

[2017年版]脊柱菅狭窄症の基礎知識と治療の問題点

著者:清水伸一

「“脊柱管狭窄症がもう治らないのではないか”とあきらめかけている人には、“それは違う!”と断言します」

熱く語るのは清水整形外科クリニックの院長として、患者の治療にあたる清水伸一医師。

清水先生は、治療を難しくしているのは「医師や薬への依存」だと考えています。本当の痛みや違和感は、本人にしかわからないもの。自ら考え、工夫する「自立治療」こそ、腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱菅狭窄症)を根本から克服するカギだといいます。

脊柱菅狭窄症のメカニズムや原因から、狭窄症治療の「いま」を教えてもらいました。

脊柱菅狭窄症ってなんだ?

背骨(脊柱)は「椎骨」という骨が積み重なってできています。
kyosaku01.png椎骨の中には空洞があり、背骨の中でつながってトンネル状の穴をつくっています。これが「脊柱管」です。
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脊柱管には重要な神経の束が通っています。
kyosaku03.png背骨が本来の形を崩すと、脊柱管の一部が狭くなり神経が圧迫されることがあります。
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こうして痛みやしびれの起こる病気が、脊柱菅狭窄症です。
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なお、脊柱菅狭窄症の症状は腰痛が主ですが、胸椎(背骨の胸の部分)や頚椎(背骨の首の部分)でも起こります。神経はつながっているので、排尿・排便障害や足裏のしびれなど、下半身に支障をきたす場合もあります。

kyosaku05.png※2015年に健康雑誌「わかさ」で独自調査。

脊柱菅狭窄症はなぜ起こる?

背骨は、5〜6kgともいわれる頭の重みを吸収、分散するため、ゆるやかなS字カーブを描いています。
kyosaku06.png本来のS字が崩れると、身体の重心にズレが生じ、骨や靭帯、筋肉のバランスが狂います。

背骨の構造上、もっとも負担が集中しやすいのが腰椎(背骨の腰の部分)の下位です。可動性が高い部分でもあるため、椎骨と椎骨が滑るようにズレたり、負担がかかるため脊柱管が狭窄するケースが多く見られます。
kyosaku14.png背骨のS字カーブが崩れるのは、加齢や疲労、個人のクセなどにより、姿勢が崩れるからです。脊柱管狭窄症の最も大きな原因は「悪い姿勢」だと言って良いでしょう。

kyosaku07.pngスマホやパソコンを長時間使っていると、猫背やストレートネック(首のカーブがまっすぐになった状態)になりやすくなります。現代人の生活習慣が、狭窄症患者を増やしているのは間違いありません。

kyosaku08.pngショルダーバックをかけたり足を組むだけでも、姿勢は崩れます。症状が腰痛に現れていても、そもそもの身体のゆがみは、別のところから起こっている可能性もあります。

そう考えると、狭窄症の本当の原因をレントゲンやMRIで特定できないのは当然かもしれません(特に腰痛の85%は特定できないと言われている)。脊柱菅狭窄症は悪い姿勢により全身の原因から起きる病気であり、全身に及ぶ病気なのです。

なぜいま脊柱菅狭窄症が問題視されるか?

脊柱管狭窄症と心の不調が問題視されています。長い間、痛みやしびれが続けば、心が折れ、不安やストレスから痛みが増殖すると言われています。

どうして自分だけ・・・

どうせ誰もわかってはくれない・・・

この後どうなるのか・・・

気分が落ちて自分の殻に閉じこもると、自然と日常の活動量が減っていきます。そうなると、筋力が衰え、ひいては狭窄症の症状が悪化していきます。

心が病気に与える影響は、脊柱管狭窄症だけに当てはまることではありません。しかし、最近数年で特に、狭窄症の治療・研究に携わる医師たちがメンタルを大きなトピックしています。

私自身、精神的ストレスから不安を訴える患者さんが非常に多いことを、外来の現場で強く感じています。

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脊柱管狭窄症治療3つのアプローチ

ここでは、脊柱菅狭窄症の根治に向けた治療を、大きく3つのアプローチに分けてみます。

  1. 痛みを抑えて負の連鎖を断つ
  2. 体幹を鍛えて痛みが出ないようにする
  3. 姿勢を正して痛みの原因を取り除く

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現在、多くの病院で行われる狭窄症治療は1。具体的には、温熱療法や湿布、コルセット、特に薬物療法です。

2、3は主に運動療法です。効果が見込めるにもかかわらず、十分に行われていないことが残念です。

薬物治療の目的と問題点

痛みは筋肉を硬直させ、身体のバランスを崩し、新たな痛みを生みます。負の連鎖を断ち切るために、薬で痛みを抑える方法は間違っていません。ただし、「多剤併用」の問題を考えさせられます。

kyosaku11.png私のクリニックには、他の病院での治療を経験した患者さんが多くやってきます。10種類以上の薬を出されていた人ばかりです。けれど、そんなに飲んでいたら、どの薬が効いているのかわかりませんし、副作用のリスクもあります。医療費もバカになりません。

まず薬を減らし、効果のあるものを確認する必要があります。そして、多くは痛みを抑える薬であり、薬だけでは脊柱菅狭窄症が根治しないことを理解してください。

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運動療法で症状の改善、根治へ

私は狭窄症治療の中心は、運動療法だと考えています。目的は痛みを抑えるのではなく、筋肉を強くして背骨のS字カーブを支え、痛みが出ないようにすること。

とはいえ、強い腹筋・背筋を持つスポーツ選手でも、脊柱管狭窄症で腰痛になることがあります。運動療法でも、やみくもに筋肉を鍛えるのではなく、体幹を支える深層筋(インナーマッスル)を鍛えるのです。
kyosaku12.png症状別に、簡単に楽しくできる体操を紹介しているのでぜひ試してください。

強い深層筋は、背骨のS字カーブを支えて身体のゆがみから神経を守り、ある程度は痛み・しびれが出ないようにすることができます。しかし、姿勢が悪いままではゆがみは解消されません。

根治へ向かうには、最も大きな原因である姿勢を改善すること。簡単な体操を動画で紹介しましょう。

ただし、一般的な「良い姿勢」が狭窄症の人にとって良いとは限らないと考えてください。悪い姿勢といっても、慣れた人にとっては楽な姿勢。無理して背筋を伸ばすと、痛みの元になる可能性があります。

無理なく姿勢を正すのに便利なのが、次の「スーッと背伸び」です。痛みの出ないギリギリのポジションが、今できる最良の姿勢です。

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詳しくは下の記事をご覧ください。

できれば30分に1回程度、生活の中で意識して背筋を伸ばしてみてください。

まとめ

脊柱菅狭窄症が改善しない場合、手術も一つの選択肢となります。ただし、固定手術で背骨を固定してしまうと、背骨としての動きが止まり新たな身体のゆがみを生み、また別のところで狭窄症が再発する可能性もあります。また、背骨の使い方(姿勢)を改善しないで手術をしても、同じ部位に圧がかかり数年後には同じ症状が再発してしまいます。
結局のところ、運動療法で身体をケア、改善しなければ根治は難しいでしょう。

身体を動かせばストレス発散になり、毎日続けることで達成感を得られます。昨今、特に問題となっている心の問題にも、有効な対策となるのです。

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